リフォームするならこのお店 --- コラム1 --- 
 
 
 
 
 
   
 
   
  工務店との現場打ち合わせといえば、彼はもっとひどい目にあったことがある。
相手は工務店の社長、というよりはむしろ昔気質の親方という感じの人だった。
台所の改装とのことでシステムキッチンを納入することになったが、当然のごとく現場に呼び出されて細かい打ち合わせを行うこととなった。
扉のカラーやワークトップの材質、そしてオプション等々ひと通り商品の打ち合わせが終わった後、納まりの打ち合わせとなったが、ここで信じがたい問題が発生した。なんとこの親方、メートル法を全く理解していなかったのである。大工の世界では、今でも寸やら尺といった昔ながらの単位、いわゆる尺貫法を使用しているのだが、たいていの大工さんは一般常識としてメートル法を理解している。そのため、現場打合せはメートル法で行うのが一般的で、寸やら尺やらで打ち合わせをするなんてことは今まで一度もなかったし、考えたこともなかった。
しかし、彼の目の前に親方は立ちはだかった。
「ここの納まりはプラス18ミリ必要で、2ミリ程度余裕を持ってもらって……」
「18ミリ? そりゃぁ何分だ?」
「え〜と……」
この打ち合わせは困難を極めた。まるで外国人と辞書を片手に話をするかのように、計算機を片手に数字を変換しながらの大変な作業であった。ただでさえ面倒臭い打ち合わせが、さらに3倍くらい大変で、もう注文を断ろうかと本気で考えていたところに、見かねた若い大工さんが通訳をしてくれることになった。
「うん、ここは18ミリだね」
「ありがとうございました。お陰で大変助かりました」
なんとか寸法的なことを伝えることが出来た。スミだしもした。これでやっと終わったとホッとしたのも束の間、あまりにも細かい寸法の指定に困惑気味の親方が言った。
「別に1分位はズレても大丈夫なんだろ?」
「余るのはいいですけど、足りないと入らなくなってしまいますよ」
「何だと! そんなもん現場の寸法に合わせて品物持ってくりゃいいじゃね〜か」
古い人はみんなそう言う。
「それは出来ないんです」
「ばかやろう! 昔からな『1分や2分は芸者の花代』って言ってな、大工はそんな細かいことはいわねぇんだ。わかったな」
「……」
当然この現場、うまく納まらなかった。