リフォームするならこのお店 --- コラム1 --- 
 
 
 
 
 
   
 
   
  この住宅業界は、クレーム産業と呼ばれるほどクレームの多い業界である。
ユーザーにとっては一生に1回か2回の高い買物。ちょっとしたことでも気になるのは分からないでもないが、ユーザーによっては「どうしてこんなことが!!」と思えるようなことがクレームになったりする。今彼は、まさにそんなユーザーに捕まっていた・・・・・・。

いつものように、営業車で外回りをしていた彼の携帯電話が鳴った。
「また〇〇さんが来てくれってよ」
「ま、またですか・・・」
K工務店からだった。彼はこの現場に、納入後にもかかわらず3回も行っている。すべてクレーム処理のためであった。扉が曲がっている、食器洗い機の使い方が分からない。そしてつい先日は、いつ付いたのか分からないスリ傷が天板にあるとのことで、新品に交換させられた。水道もガスも接続された状態からの交換は、手間も費用も相当かかり、会社からは責められ、施工業者からは工事費を吹っかけられ、さんざんな目にあった。これ以上はもうないだろうと思っていたところに、今回の電話である。彼はすっかり怯えていた。
「こ、今度はなんでしょうか」
「扉の取っ手に、大きな傷があるんだとよ。また騒いでるぞ」
「はぁ、すぐに向かいます」
現場に到着した彼を、その家の奥さんは鬼の形相で迎えた。
「これを見てくださいよ。この取っ手、傷だらけじゃないですか!」
そう言われて見てみると、傷らしきものは見当たらない。どこにあるのだろうかと、しばらく取っ手とにらめっこしている彼に、奥さんは怒鳴るような厳しい口調で言った。
「これよ、こ〜れっ! まったく、あなた責任感じているの」
よく見ると、毛の先ほどもないような小さな傷らしきものがポツっとあった。家主によれは、こういう取っ手が全部で4つあるという。
「これ、で、す、か・・・・・・」
ルーペをかざさなければ見えないような、こんな小さなものが、果たして傷といえるのだろうか。彼の中に凄まじい怒りがこみ上げてきた。しかし、彼の怒り以上に怒りに震える奥さんを見たとき、そんなものはどこかに飛んでいってしまった。
「すぐに交換します」
「当然よ」
「・・・・・・」
と、そのとき、業者らしき人が訪ねてきた。
「あの〜、また扉の色が違うって聞いたんですけど」
家具屋さんであった。
「あなたねぇ、何回言わせれば気が済むの!」
「あの〜、どちらの扉でしょうか」
「これと、これと、これよ! あなた責任感じているの」
頭を掻きむしりながら困った表情を浮かべる家具屋さん。ふと、その家具屋さんと目が合った彼。二人はしばらく見詰め合っていた。