リフォームするならこのお店 --- コラム1 --- 
 
 
 
 
 
   
 
   
  「洗面台手配して下さい。大至急お願いします」
「○○邸の見積り、大至急提出願います」
「○○邸のキッチン打ち合せ、大至急お願いします」
彼が一日の営業を終えて事務所に戻ってくると、こんな電話やFAXが次々と襲い掛かってくる。この中に、枕詞のように決まって必ず入っているフレーズがある。それが「大至急」だ。
彼は常々思う。この人たちは、本当に急いでいるのだろうか? と。

先日、ある問屋から給湯器の注文が入ってきた。例のごとく「大至急」ということだったが、運悪く在庫がない。そのため、通常であれば週末の金曜日に納入できるものが、次の週の火曜日になってしまうとのことだった。
非常にイヤな予感がするが、とにかくこのことを問屋に伝えなければならない。彼は恐る恐る受話器を手にとった。
「申し訳ありません、納期がずれてしまうんですが・・・」
「何言ってるの! ダメだよ。土曜日に工事するんだから、今週中に納入してもらわないと困るよ」
だったらもっと早く注文しろと言いたくなるが、そこを堪えて、彼は続けた。
「それは分かりますが、工務店さんに連絡していただいて、何とか工期を延ばしてもらえるように頼んでいただけないでしょうか」
「そんなことできるわけないでしょ。とにかく何とかしてよ。大至急だよ」
問屋はそう言うと、一方的に電話を切ってしまった。
仕方なく彼は、今週中の納入に向けて全力を傾けることとなった。工場に直接掛け合い、「キミは会社のルールを知らんのか!」とさんざん怒鳴られながらも、生産ラインにねじ込んでもらうことに成功、さらに倉庫へ連絡し特別の配送便を手配してもらった。こうしてどうにか土曜日の朝に納入することができたのである。

そして翌週の月曜日、工事も一段落していると思い、納入先の工務店にお礼がてら訪問することにした。あれだけ無理をして納入したのだ。お褒めの言葉の一つでも聞きたいところだ。
ところが行ってみると、何とその給湯器が工務店の作業場にポツリと置いてあるではないか。
「あの〜、社長。先週の土曜日は工事しなかったんですか?」
「ん? 工事は今週の土曜日の予定だよ」
「・・・・・・」
――くそ〜、あの問屋の野郎。
この業界、なんでもかんでも「大至急」言っているうちに、スケジュール管理という概念がなくなってしまったようだ。そんな「大至急」に振り回され、彼の忙しい日々は今日も続く。